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北アルプス 縦走 ブログ

北アルプス編②(10/1~10/3)

  • 10/1 涸沢~横尾~槍ヶ岳山荘

  • 10/2 槍ヶ岳山荘~双六岳~三俣山荘

  • 10/3 三俣山荘~雲ノ平山荘

 10月1日 涸沢~横尾~槍ヶ岳山荘

 

次の目的地は槍ヶ岳。

前々日に北穂高から槍ヶ岳へと繋がる大キレットを見て、私の技術と体力ではこの道を歩くのは危険だろうと判断したため、一度横尾まで下って槍ヶ岳を目指します。できることなら横尾まで戻ることなく大キレットを行きたかったのですが、重いザックを背負って無事に槍まで行ける自信がなかったので諦めます。とほほ。

 

うっすらと雲がかかった朝。前日のようなモルゲンロートは期待できないだろうと、そそくさと出発(ここ数日で一番のモルゲンロートだったと後で知ることになるのですが…)。紅葉のトンネルをくぐって横尾へ向かいます。

 

「でっかいザックですね~」と気さくに話しかけてくれた素敵な女性と楽しくお話をしながら歩きます。こうやって話しかけてもらえるなら今度から街中でもでかいカバンを持って歩くことにしよう。

沢沿いできれいな景色を楽しみながら休憩。コーヒーをごちそうになって行動食までいただいてしまいました。ありがとうございます。

美女パワーでフル充電。再出発。

子連れの母猿に威嚇されたりしながら槍沢を登って行きます。槍ヶ岳を目指して、永遠に続くかと思われるような長い道を登ります。ここもまた紅葉が素晴らしい。9月下旬から10月上旬の北アルプスの景色は極上ですね。はっとするような風景の連続です。

 

やっとの思いで槍ヶ岳山荘に到着。すぐ目の前には槍ヶ岳の大きな姿。

そして西側には一面の分厚い雲。雲海!まさに雲海!ゆっくりとうねりながら流れる雲の力に圧倒されます。

槍沢の登りがしんどくて途中の小屋で泊まろうかとも思いましたが、なんとか頑張って槍ヶ岳山荘まで来てよかった。槍ヶ岳山頂直下のここからは東も西も大展望で、夕日も朝日もばっちり見れそうです。

 

山を眺めながらいつも通り一人でカップヌードルを楽しんでいると、神奈川から来られたという方が話しかけてくださり一緒に食事をすることに。親切なお二人は「余っても持って帰るのが大変だから」と、ハンバーグやソーセージなど普段の私の食事からは到底考えられない豪華な食事を振る舞って下さいました。あ~山の上で肉なんて幸せだー!久しぶりに食べる肉に全身の細胞が狂喜乱舞。本当にありがとうございました。

この日の夕日は素晴らしいものでした。一面に広がる雲の彼方へと沈んでいく太陽。この美しさを一生忘れるものかと、その一瞬一瞬の光景、色、風の冷たさ、匂い、音、岩の手触りなどあらゆるものを吸い込んで心にしまい、テントへ戻りました

 

とても風の強い夜でした。西風が強いので、ここでは東の岩陰にテントを張るべきですね。

 

 10月2日 槍ヶ岳山荘~双六岳~三俣山荘

 

前日からの強風は朝まで止むことなく吹き続け、一晩中テントがバタバタと音をたてていました。おかげであまり眠ることができず、ぼんやりとした頭で朝を迎えました。

 

頭はそんな状態でしたが、この日も極上の日の出を拝むことができました。朝日を受ける槍ヶ岳の姿が厳か。風が強いせいなのか、遠くの空には波型の雲がちらほら。

この日は午後から天気が崩れ、翌日も一日雨になりそうだということなので、足早に出発。この日の目的地は黒部五郎小屋。いよいよ、雲ノ平が近づいてきました。

 

雲ノ平は私にとって紅葉の涸沢と並ぶ、この旅最大の目的の一つでした。

アルプス奥地に位置し「日本最後の秘境」と呼ばれる憧れの地。その雲ノ平がもうすぐそこに...!そう思うとワクワクを抑えられませんでした。

 

槍ヶ岳から西鎌尾根を歩いて黒部五郎を目指します。まっすぐ伸びる美しい稜線、久しぶりの尾根歩きに胸が躍ります。

が、感動も束の間、前日から吹き続けている強い西風に乗り雲がどんどん押し寄せてきます。そして気が付けば雲に包まれあたり一面真っ白に。20m先がやっと見える程度です。

 

展望がきかないうえに、とにかく風が強い。こりゃあまるで台風だ。体はよろめくし、休むことなく左側から冷たい風が吹き付けてくるので左半身はコチコチ。なんとか体勢を保ちながら、視界も悪いので道を外れないよう気を付けて進みます。強風にガス…やってられないぜ!

 

黙々と歩いて三俣蓮華岳に到着。ずっと強風&ガスだったため精神的にも体力的にもヘトヘト。滅入りました。

予定ではここから黒部五郎へ向かい、翌日に薬師岳へと行く予定でしたが、翌日の雨予報とここまでの強風で完全に心を折られて進路変更。この日は三俣山荘でストップすることに。できることなら黒部五郎に行きたかったのですが、折れてしまった心は仕方がない!開き直ります。

 

三俣山荘でテントを張って鷲羽岳へ。雲の切れ間から見える水晶岳、黒部川源流部、そして三俣蓮華岳。晴れていればもっときれいだろうに…と、少し残念でしたが、またもう一度ここへ来るための良い理由ができたと思えば万事OK。次は必ず最高の天気で雲ノ平を楽しんでやろうじゃないか!

ぽつぽつと雨が降り出したので退散。

 

この日は小屋でご飯を頂くことに。レトロな内装、アットホームな雰囲気で心が休まります。流れている音楽もとても優しい。そしてキッチンからは、トントントンと包丁の小気味よい音が聞こえてきます。胸に染み入るなんとも家庭的な響き。

そしてキッチンで包丁を握る女性の背中には小さな赤ちゃんが。赤ちゃんをおぶって料理する姿がとても暖かい。和むわ~。

この日のご飯は鹿肉のシチュー。めちゃ美味い。

全国各地でシカによる被害があり、多くのシカが駆除されているものの、そのほとんどは食べられることもなく処分されているそうです。せっかくの生命を無駄にしたくないという思いから、ここでは積極的に鹿肉を使っているとのことでした。そんな思いも含めて、本当にいい小屋だ。

 

食事の席では、日本酒を飲みまくって食事前からベロンベロンに酔っぱらっていたおじ様とご一緒させていただきました。食後にワインを飲みながら楽しくお話。私が太平洋から日本海へと歩く旅の途中だと言うと、「そうか!じゃあ明日の朝飯で納豆が出たらお兄さんにやるからな。納豆がなかったら海苔を取っておいてやるからな!」と言ってくれました。

朝はいつも通りテントでカップヌードルを食べるつもりだったので、思いがけず明日の食事が豪華になりそうでワクワク。

 

食事を終えテントに戻ると、テントが強風でひしゃげていました。そしてテントの底にあいた穴からは大量の浸水。く~やってらんねえぜ!

 

ずぶ濡れになりながら、就寝。やってらんねえぜ、寒いわ。

 

 10月3日 三俣山荘~雲ノ平山荘

 

朝、目覚めてみると案の定テント内はびしょびしょ。テント底からの浸水で何もかもが濡れている。そして一晩中ずっと降り続けた雨が、朝になってもバチバチとテントに打ち付けていました。

 

そんな状態ではとても動き出す気になれず、寝袋の中でぐずぐずしながら雨音を聞いていると、「お兄さん、いるか?」と前日のおっちゃんが訪ねてきてくれました。お、宣言通り納豆を持って来てくれたのかな、なんて期待しましたが朝ごはんには納豆も海苔もなかったようで、「ごめん、なんも調達できんかった!ハハハ!」とのこと。う~ん残念!期待してごめんなさい。

 

伊藤新道を行くというおっちゃんを見送り(「この雨じゃ川に流されるかもな!ハハハ!」と笑っていたが無事だろうか)、雨が弱まったころを見計らってテントを撤収。ひとまず雲ノ平山荘を目指します。

強風に大雨という悲しいお天気ではありましたが、憧れ続けた雲ノ平ということもあって気分は上々。黒部川の源流部を歩いていきます。ここに降った一粒一粒の雨粒が一筋の流れとなって富山湾に流れ込むのか…と初めはロマンチックな感傷に浸ったりもしていましたが、雨はどんどん強まり登山道は水没。そんな余裕は瞬く間になくなりました。

もはや道ではない、川だ。

川を歩くこと2時間半、朝のうちに雲ノ平山荘に到着。これでこの日の行程は終了。木の内装の温かみある山荘で、雨をやり過ごします。

乾燥室でずぶ濡れの持ち物を乾かし休息。雨音を聞きながら、本棚にあった五木寛之の『親鸞』をむさぼり読んで過ごします。

 

19時ごろから映画の上映会。山の上で映画を観るなんて考えもしなかったので、その非日常感にワクワク。小屋の方々と一緒に、ビール片手に楽しみます。

この日の映画は『バグダッド・カフェ』。映画のゆるく気怠い空気が妙に心に響き、これからしばらく私の脳内BGMは“calling you”に。

 

翌日には雨風が収まってくれることを祈りながら、就寝。

憧れ続けた雲ノ平1日目は、全く景色を見ることもできずに終わりました

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