
【ジャンダルム -焼岳・西穂高岳・奥穂高岳縦走-】(8/10~12)
8月10日 上高地~焼岳~西穂山荘
8月10~12日の2泊3日で焼岳・西穂高岳・奥穂高岳の縦走へと出かけました。ずっと憧れていたジャンダルム。
私のジャンダルムとの出会いは2011年の夏、自転車旅の途中で訪れた静岡の居酒屋でのことでした。そこで出会った山好きの方々の中に、最近ジャンダルムを歩いたという方がいたのです。
その男性に対する周りからの羨望のまなざし。「全然いけるよ」とちょっと得意げな御仁の姿。ジャンダルムは山好きにとって何か特別な存在であるらしい...。
そう感じて以来、いつかはジャンダルムに行ってみたいという思いが少しずつ募っていったのでした。
・・・
前日23時ごろに車で出発。東京から約4時間で沢渡の駐車場に到着です。
いかついポルシェの脇で寝袋にくるまり、夜空を見上げると一面に星、星、星。いい山旅になりそうだ。
1時間ほど仮眠を取った後、朝5時過ぎにタクシーで上高地へ。沢渡から上高地までのタクシー代は4200円の定額制。今回は4人で行ったので一人たったの1050円。バスより安い!
上高地へと向かうタクシーの運転手さんはどうやら山好きのよう。焼岳を経由して西穂山荘に行くつもりだと伝えると、翌日のジャンダルムに備えて、今日は無理せずまっすぐ西穂山荘に行き体力を温存するべきだろうと、ごもっともなアドバイス。そのほうが賢明なようなので忠告に従うことに。
6時ごろ登山口に到着。上高地の冷たく澄んだ空気が美味い。
改めてコースタイムを確認。運転手さんに言われた通り西穂山荘まで直行すれば約4時間。するとY氏から「これじゃ午前中に着いちゃうじゃん」との一言。それもそうだ。せっかくだから焼岳も登ろうということになり、当初の予定通り焼岳へと進路を変更。
運転手さん、素直になれなくてごめんなさい...。
しかしながら、この選択は大正解でした。
樹林帯を抜けて目の前に現れた焼岳の迫力ある大きな姿。むき出しの山肌がなんとも厳か。笹の葉の朝露も、朝日に照らされ弾けんばかりに輝いておりました。
こんなにも美しい光景に出会えるならば、行動時間が倍になっても構いません。(焼岳経由で西穂山荘へ行く場合のコースタイムは約9時間)




火口周辺だけでなく登山道の脇など至る所から水蒸気が噴き出している焼岳はまさに「活火山」。そして火口からは強烈な匂いの火山ガス。地球、生きております。
焼岳山頂から北東の方角に目をやると、穂高の山々の連なりが。険しい稜線もはっきりと捉えられます。ずっと遠くに見えるその頂きに、明日には立っているのだと思うとなんとも不思議な気分になるのでした。本当にあんな遠くまで1日で歩けるのだろうか。
焼岳を後にして、樹林帯ウォーキングを楽しむこと約3時間、西穂山荘に到着です。
テントを設営し(ほかのテントのポールを間違えて持ってきてしまったU氏は設営を諦め、「これもビバーク訓練だ」とテントにくるまり顔だけ出して寝られました。この前向きさとアウトドア力の高さを見習わなければ...。)、食事を済ませて就寝。
この夜も、満天の星空。
8月11日 西穂山荘~ジャンダルム~奥穂高岳~涸沢ヒュッテ
うっすらと空が明るくなりだしたころ、5時前から行動開始。上空に薄く雲が広がり空気も少し湿っているものの、視界は良好。The day。
笠ヶ岳や焼岳、乗鞍岳もはっきりと見えます。アップダウンを繰り返して、西穂高山頂へ。




一休みして7時半ごろ山頂から出発。いよいよここから、奥穂高岳までの岩の縦走路が始まります。
そして一歩踏み出してみてびっくり。ここまでの道とは明らかに岩のテンションが違うのです。「ここから先は普通の登山道とは違うぜ」と山が語っているかのような雰囲気。慎重に進んでいきます。
間ノ岳、逆層スラブを越え約3時間で天狗岳に到着。晴れていれば逆層スラブも問題なさそうです。鎖もちゃんとありますし。でも、雨で滑るようなときにはあまり歩きたくないですね。
ここまではほぼコースタイム通りでしたが、ここから先で思いのほか時間がかかりました。テント泊装備を背負っての行動で疲れが出てきたことや、4人で登っていたために岩場の通過に時間がかかったことが要因でしょうか。勉強になります。




それにしても、天狗岳から見るジャンダルムは圧巻でした。目の前にそびえたつ岩の塊は大きく美しい。その迫力の山への登りは浮石ばかり。落石を落さぬよう慎重に足の置き場を選びながら進みます。
天狗岳からガスの中を歩くこと約2時間、ジャンダルム直下の広場に到着。荷物をおろして休んでいると、視界を遮っていたガスがぱっと晴れ、一瞬だけジャンダルムから奥穂高山頂までの道のりをはっきりと目にすることができました。
スタート時には遠く米粒のように見えていた奥穂高岳がもう目の前に...。その頂きの祠の形もくっきりと見ることができました。ここまで長い距離を歩いてきたこともあって、その姿はとても神々しく見えました。美しい...。
ザックを置き、空身でジャンダルムへ。西穂山荘を出てから約9時間、ようやく憧れのジャンダルムに到着です。




気を引き締め直して奥穂高へと再出発。
このジャンダルムから奥穂高までの道が、なかなかでした。
ここまではなんてことない道だなあ、なんて思っていたのですが、ここからロバの耳、馬の背と緊張の連続。ロバの耳の下りは傾斜が急で足場も見えないし、馬の背は左右がストンと切れ落ちたナイフリッジ。ああ、極上。
そして出発から約11時間、16時前にやっとこさ奥穂高岳山頂を踏むことができました。今までにない緊張の尾根歩きだっただけに感動もひとしお。これまで感じたことがないほどの達成感でした。






しばらく感動に浸って下山。
穂高岳山荘でテントを張る予定だったもののテント場が一杯で泊まれず、あえなく涸沢ヒュッテまで下ることに。涸沢に着いたのは19時。
テントを立てるや否や、みな泥のように眠り込んだのでありました...。
8月12日 涸沢ヒュッテ~横尾~上高地
朝日に染められ移り変わる空の色をゆっくり楽しみ、7時過ぎから行動開始。今日は上高地に戻るだけののんびりコース。昨日までの余韻に浸りながら、美しい木々の緑や小さな花、川の流れを愛でながら下ります。
上高地まで下ると、焼岳から奥穂高岳まで、今回の山行で歩いた山々を一望することができました。「え、あそこからあそこまで歩いたの?」と自分たちでも驚くほどの距離、山の塊。
清々しい充実感で心が満たされるのを感じながら、帰途につきました。

