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北アルプス 縦走 ブログ

【2016年3月1~3日 八ヶ岳・権現岳~赤岳縦走】

 3月1日 観音平~押手川~青年小屋冬期小屋
 
高校時代からの親友Y氏と二人で雪の八ヶ岳へ。Y氏は私がアルプス縦断の旅をしているときにも会いに来てくれた友人。そして私も彼が世界一周の旅をしているところをウガンダまで訪ねに行ったりしたのでした。お互いの旅に、何らかの形で顔を出す素晴らしい友人でございます。
 
天気予報では3日とも晴れるよう。期待に胸を膨らませながら、東京の自宅からバスで小淵沢へと向かいました。
 
小淵沢からタクシーで観音平の登山口ゲートまで行き10時半ごろから行動開始。見上げれば空は真っ青、最高の登山日和や!!雪原を照らす日差しは暖かく、まぶしさのあまり目も開けていられないほどでした。
標高が上がるにつれて足元の雪も深くなり、どっさりと雪を乗せた木々の枝は重さに耐えかね下向き加減。ちょうど顔の高さにある枝の雪を食べながら水分補給。すっと身体に染み込む優しい自然のお味。
 
押手川を過ぎたあたりからさらに積雪が増え、すっぽり膝下まで埋まるほど。ただ、ワカンなしで行けるのだから、やはり暖冬の影響で例年よりは雪が少ないのだろう。
 
編笠山を大きく巻くように続く細道は、雪に包まれた静寂の世界。さらさらと雪の流れる音だけが聞こえる静かで豊かな瞬間...。
細道を抜けると、目的地の青年小屋に到着です。積雪量次第ではここまでたどり着けないのではないかと心配していただけに一安心。この日の行動時間は約6時間。
小屋に入ると先客が一名。大学生のF君はここから北上し、八ヶ岳全山縦走を目指すという。冬にそんな計画を立てるなんて、なんて素晴らしい!
 
Y氏と鍋を楽しみ就寝。
夜の間、ずっと外では風がごうごうとなっていました。明日、赤岳まで歩けるだろうかと不安を抱きながら夜を過ごしたのでした。
 
 3月2日 青年小屋~権現岳~赤岳~行者小屋
 
F君は早くから準備を始め、3時過ぎには小屋を出たようでした。外は相変わらずの強風、ガスも出ているようだ。
一方私たちは、昼近くに天候が良くなる予報だったのでのんびり4時過ぎに起きだし準備を開始。6時ごろ身支度を整え出発しようとしていると、大きな音を立てて小屋の扉が開きました。こんな時間に登ってくる人がいるのかと驚いて振り向くと、そこに立っていたのはF君。聞くと、途中で道を見失い、3時間近く歩き回りやっと小屋に戻って来たのだそうだ。
夜明け前の暗い時間に、ガスと雪で一面真っ白の世界を歩くことの難しさを思い知らされる出来事でした。無事でよかったよF君。
 
そういうわけでこの日はF君とともに3人で行動をすることに。そしてF君、大学の部活で普段から山を歩いているということもあってか、すでに夜明け前の山を数時間歩いているにもかかわらず全くスピードが落ちない。すごい体力だ、これが若さか...。
ところどころで腰まで埋もれるような積雪が。ガスで視界が悪いなか、雪をかき分け忠実に稜線をなぞるようにして登っていきます。稜線上は強風が止むことなく吹き付け身体も振られます。
 
しかし、権現岳を越え長い梯子を越えたあたりから雲が晴れそれまでの天候が嘘のような快晴に。青い空と輝く峰々が美しい...。
抜けるような青空のもと、空に手が届くのではないかというような気分で空中散歩。
キレット小屋近くで長めの休憩をとります。
ここでY氏のザックから取り出されたのは茶色に変色した冷凍バナナ。図らずもザックの中でシャリシャリに凍ってしまったバナナでしたが、これが最高のお味!凍った皮を歯でかじってこじ開けると、そこにはシャーベット状態のきれいなバナナさん。
口の中で溶かしながら食べるとじんわりと甘酸っぱい果汁が広がります...。
冬山にはバナナ必携!
 
いざキレットへ。
正午に近くなり日差しも強く、雪が緩んだ印象があったので慎重に進みます。今にも崩れそうな細かな岩の上に薄く積もった雪。足がかりと手がかりを確認しながらそろそろと登っていきます。
キレットの短くも長い急登を過ぎると目の前には赤岳の大きな姿が。ゴールも目前!
 
赤岳山頂では風もほとんどなく、360度の眺望を楽しむことが出来ました。この日歩いてきた稜線もはっきりと眼下に見下ろすことが出来ます。人ってこんなに歩けるものなのかと不思議な気分...。それにしても、私とY氏がへとへとになりながら赤岳にたどり着いた一歩でF君はまだまだ余裕の表情を見せていました。体力の衰えを感じずにはいられません...。
山頂からの眺めを楽しみ、F君ともども行者小屋へ。
テントを設営し、一日の思い出に耽りながら眠りにつきました。
この夜は-20℃以下まで冷え込みました。寒い寒い。それでも、冷たく澄んだ空気のおかげで美しい星空も拝むことが出来ました。
 
 3月3日 行者小屋~美濃戸口
 
朝5時ごろに目覚めるとすでにF君の姿はなく、北へ向けて旅立ったようでした。全山縦走は果たしてできたのだろうか、どこまで行けたのだろうか。またどこかの山で出会ったら、いろいろと話を聞きたいものです。
のんびりと準備を済ませて美濃戸口へと下ります。雪が描き出す柔らかな曲線とその陰影に心奪われながら、沢沿いに歩いていきます。そんな道を歩いていると、やはり自然の作り出す造形や色彩こそが、この世界で最も美しいものではないかと感じます。
 
Viva 地球!
 
美濃戸口からタクシーで近くの温泉へ行き、3日間の疲れを洗い流して家路につきました。素晴らしい山旅にしてくれたY氏、F君、そして最高の天気で迎えてくれた山の神様、ありがとう。
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