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中央アルプス/御嶽/乗鞍 縦走 ブログ

中央/御嶽/乗鞍編②(9/21~9/23)

  • 9/21 木曽福島市街~中の湯~不易の滝入口

  • 9/22 不易の滝入口~油木美林~御嶽山~白竜避難小屋(賽の河原)

  • 9/23 賽の河原避難小屋~継子岳~日和田高原キャンプ場

 9月21日 木曽福島市街~中の湯~不易の滝入口

 

前日に買い込んだ約25日分の食料をなんとかザックに押し込み、御嶽山へ向けて出発。

お、重い。ここまでの旅で、カモシカのように痩せ細った脚はふらふら…。

しかしながら天気は最高!気持ち良い秋晴れの空の下、登山口まで約25kmの舗装路歩きを楽しみます。真っ青な秋空と黄金色に輝く稲穂の、里の風景がなんとも美しい。

 

お散歩中のご夫婦から飴を頂いたりしながら御嶽山黒谷口へと歩いていると、至る所に「百草丸」の文字。百草丸とはその昔、御嶽山で修行をしていた山伏が近辺の人々に伝えた胃薬だそうです。そういえば、奈良と和歌山県にまたがる修験の山・大峰山周辺でも「陀羅尼助」という胃薬がそこかしこで売られていました。

山伏は胃に優しいんだな。

 

山に近づくにつれ御嶽信仰の色合いも強くなり、道路脇の霊神碑の数も増えていきます。霊神碑とはお墓のようなもので、「行者や信者の魂は御嶽山に鎮まる」という考えに基づいて立てられるそうです。

 「亡骸は いずくの里に埋むるとも 心は御嶽の 有明の月」

という歌からも、その考えや山と信者との強い結びつきが感じられます。

この日は山への入り口となる不易の滝駐車場にテントを張る予定でいたのですが、その数km手前に3軒ほど宿が並ぶ集落?がありました。前日丸一日、木曽福島で快適な“下界ライフ”を送り“旅モード”に戻れていなかった私は、その誘惑に打ち克てず誘われるがままに宿の門を叩きました。

しかし、見事に3軒すべてに断られ(どこも開店休業状態)、結局予定通り野営をすることに。「旅モードに戻れ」という神からのお告げだったのかもしれません。

数匹のお猿さんが近くを飛び回っていたので、「お邪魔しますね~今日はここで寝させてね~」と声を掛けてテントを設営。

 

深夜、ふと目が覚めてテントから出てみると、静まり返った木々のずうっと上に、無数の星がきらめいていました。ついさっきまで「宿で風呂入りたかったな~」なんて思っていましたが、この空のおかげでそんな気持ちもどこへやら。ぼうっと夜空を見上げます。

冷たい空気を大きく吸い込み、自然と一体になるような充足感が全身に満ちていくのを感じながら、縦200cm×幅100cm×高さ90cmのプライベート三ツ星ホテルに戻りぐっすり眠るのでした。

 

 9月22日 不易の滝入口~油木美林~御嶽山~白竜避難小屋(賽の河原)

 

鳥の鳴き声で目覚め、6時半ごろスタート。油木美林に入ります。

油木美林はケヤキの原生林やシラビソの大木が美しい、素晴らしい遊歩道です。湿気を含みひんやりとした朝の美味しい空気の中、こんな美しい道を歩けるなんて幸せ。

がしかし、結構な登りでなかなか大変。特に重い食料を持った状態ではちょっときつい。美しい木々や滝、苔や土の匂いに元気をもらいながら、なんとか進みます。

 

7合目にて名物のお餅を頂き、紅葉した木々を抜けて8合目まで来ると森林限界。突如視界が開けます。目の前に全貌を現した御嶽山の、あまりの大きさに言葉を失います…。

これがひとつの山だなんて…!山5個分くらいの存在感。“ひとり民族大移動”ことアンドレ・ザ・ジャイアントを思い出しました。圧巻です。

 

紅葉した美しい斜面を眺めつつ登り、二の池に大きい荷物を置いて、剣ヶ峰へとお鉢巡りに向かいます。

エメラルドグリーンに輝く二の池を後にして、頂上をぐるりと歩きます。ゴツゴツした溶岩の上を歩き、剣ヶ峰近くまでくると、噴煙と硫黄の匂いが。この4日後、御嶽山は噴火しました。被害に遭われた方を思うと、心が痛みます。ご冥福をお祈りします。

二の池に戻り荷物を整理していると、ひとりのおっちゃんが話しかけてくれました。

話によると、おっちゃんは登山道の点検という仕事を「安い金で」引き受け、月に数度、御嶽に登っているとのこと。「安い金で」と笑いながら話すその表情からは山への愛が感じられ、またこういう方のおかげで自分は山に登れているのだと、身に染みて感じました。御嶽のおっちゃん、そして全国のおっちゃん、ありがとう。道を作るって、すごいことだ。

 

賽の河原の避難小屋に荷物を降ろし、夕日を拝むべく摩利支天山へ。ここから360°見渡すことができます。どこまでも、山、山、山。西に一際目立っているのは白山の姿だろうか。大きな山だ。

あまりの寒さに夕日の沈む瞬間まで待てずに小屋へ退散。

 

夜、外に出ると満天の星空。新月なのか、月明かりもなく空一面に広がる星。頂上から見る夜空は格別。遮るものも何もなく、まるでプラネタリウムのようでした。

ただ、雲一つない夜だっただけに冷え込みも格別。翌朝には池も少し凍っていました。

 

 9月23日 賽の河原避難小屋~継子岳~日和田高原キャンプ場

秋分の日。今日からは夜の方が長くなるのか、としみじみ感じながら行動開始。

東の方角、八ヶ岳と南アルプスの間から昇る朝日を横目に、北へと歩きます。キンキンに冷えた朝の空気が清々しい。三の池、四の池を経由して継子岳へ。前夜の冷え込みが厳しかったからか、四の池から流れる沢には薄く氷が張っていました。この沢で水を補給。冷たくて美味い!そのまま飲めるきれいな水があるって本当に幸せなことだ。日本の豊かな自然に、感謝感謝。美しい自然を美しいまま、次の世代に引き渡さなければ。

 

継子岳までの道のりも最高。岩の稜線歩きも楽しいし、何より眺めがすばらしい。御嶽山はどこから見ても圧巻の迫力で、池に映る姿はまるで絵葉書のよう。どこを切り取っても美しい。

 

思えば旅が始まって以来、美しい物しか見ていない。毎日毎日、美しい景色に美味い空気、美しい人々との出会い。毎日が特別、新鮮、刺激的。毎日がスペシャル!いつも私の脳内BGMは竹内まりやでした。

白山や乗鞍岳、北アルプスの山々を一望できる継子岳からの眺望を楽しみ、日和田高原方面へ下山します。日に日に色濃く紅葉していくダケカンバやナナカマドが美しい道ですが、とても急。とても険しい。そして、あまりこの道を通る人がいないのか、登山道が荒れている…!背中のでかいザックがいちいち木に引っ掛かるし道も不明瞭、疲労とストレスが溜まるばかりで一向に進まない…。

 

やってらんねえぜ、ということで、この日一日分の行動食と考えていたくるみパンを一気に食ってストレス解消。くるみパンで気を取り直して再出発。くたくたになりながらも、チャオ御嶽スキー場のゲレンデを経由して舗装路に到着。この日の目的地、日和田高原キャンプ場を目指して歩きます。

 

白樺林の間をぬうようにアスファルトを歩くこと約3時間、日和田高原キャンプ場に到着。受付へ向かいます。

 私「テン泊したいんですけど~」

 受付の方「3100円だけど、いい?バイクで来たの?」

 私「歩きです。…1000円くらいかな、なんて思ってたんですけど…」

 受付の方「じゃあ1300円でどう?」

 私「ありがとうございます。」

 

受付を済ませテントを設営。白樺の木々に囲まれた気持ちのいいキャンプ場で就寝。

ガサガサと物音がするのでテントから顔を出してみると小さなかわいいウリボーちゃんが歩いていましたが、私の視線に気が付いたのか、またガサガサと音をたてて森に消えていきました。

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