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北アルプス 縦走 ブログ

北アルプス編④(10/7~10/9)

  • 10/7 船窪小屋~蓮華岳~針ノ木小屋

  • 10/8 針ノ木小屋~針ノ木岳~爺ヶ岳~冷池山荘

  • 10/9 冷池山荘~鹿島槍ケ岳~五竜岳~五竜山荘

 10月7日 船窪小屋~蓮華岳~針ノ木小屋

 

二日前から降り続けた雨は夜のうちに雪へと変わっていたようで、起き出してみると辺り一面雪化粧。予想だにしなかったその景色に思わず息をのみました。

二日ぶりに味わう冷たく澄んだ外の空気、青く晴れ渡った空の下で、ピンク色の朝日を柔らかく受けとめる白い山並み…。なんて清々しいんだ!

朝7時からみんなでラジオ体操(これも船窪小屋恒例行事なのか?)。

肺を目一杯つかって思い切り息を吸い込むと、みずみずしい朝の空気が身体の隅々にまで行き渡るようで、小屋にこもって怠けていた身体が一気に目覚めていきました。ラジオ体操最高。

 

朝8時ごろ針ノ木小屋を目指して出発。

七倉岳を過ぎ、北葛岳に向かう途中の痩せ尾根で3mほど滑落。足を踏み出したところでザックが岩に当たってバランスを崩し、重いザックに振られるままコロコロと転がってしまいました。運よく転落したのが傾斜の緩いハイマツ帯だったため無傷でしたが、これがもし切り立った崖だったらと思うとゾッとしました。油断禁物でございます。

 

この日は日差しも暖かく、いくつかのクサリ場やハシゴを越え北葛岳を通り過ぎたころには雪もほとんど溶けてなくなり、立山など標高3000m近い山の山頂付近に白く残っている程度でした。

 

そんなぽかぽか陽気の中、下から眺める蓮華岳の美しさと言ったら…。

暖かな陽光を浴びるなだらかな山頂はまるで春のスイスアルプス(行ったことないけど)。そんな牧歌的で優しい印象の蓮華岳からは、雲海の先に富士山や八ヶ岳、槍ヶ岳や立山の姿を見ることができました。山頂でゆっくり景色を楽しみ、針ノ木小屋へ。

針ノ木小屋のテント場は、正面に立つ船窪岳や槍、水晶岳、野口五郎岳がはっきりと見える素晴らしい立地。太陽に暖められ谷から吹き上がってくる甘い風を感じながら、のんびり身体を休めました。ああ、いい一日だ(プチ滑落したけど)。

 

 10月8日 針ノ木小屋~針ノ木岳~爺ヶ岳~冷池山荘

 

朝5時ごろにスタート。ちょうど針ノ木岳頂上で日の出を迎えました。針ノ木岳から爺ヶ岳まで、扇沢をぐるりと囲むように連なる山々が朝日に照らされ美しい。この日はそんな顕著な稜線を忠実になぞる、ザ・尾根歩きといった一日でした。

 

針ノ木岳、スバリ岳、赤沢岳…とピークを踏んでいきます。赤沢岳~鳴沢岳間で、扇沢と黒部湖を結ぶトロリーバスのトンネル上を通過。

思えば3年前の5月、このトンネルを通って立山に行ったのが私の初アルプスでした。ろくに下調べもしていなかった私と友人Kは、その積雪と強風に度肝を抜かれたのでした。5月って、春じゃないのか…と。夏靴に軽アイゼンと、なめきった私の装備ではどこにも行けず(友人Kはしっかり装備を揃えていた)、ただただ雪原歩きに終始した3日間でしたが、その雪をまとった山々の雄大さと美しさに完全に魅了され、それ以来自然の虜になったのでした。

 

稜線上から見るその思い出の立山は、この日も私の心を捉えて離しませんでした。立山をずっと眺めながら、爺ヶ岳を越えて冷池山荘へと進みます。

冷池山荘のテント場は東西に大きく開けていて、西には立山、東には分厚い雲海がずっと先まで広がっていました。なんという眺めだろう…。

 

眩しい夕日が立山に沈みその美しい山影を浮かび上がらせるころ、ふと反対側に目をやると、ほんのり赤く夕焼けの余韻が残る東の空から、まんまるの大きな月が昇ってきていました。雲の奥から姿を現した大きく黄色い月の美しさに思わずため息。その場に居合わせた誰もが言葉を失っていました。

 

そしてこの日は偶然にも皆既月食の夜。

まぶしい満月にゆっくりと影がひろがっていきます。20時ごろになると月は完全に地球の影に覆われ、赤暗い光を放ち始めました。そうして月が明るさを失うと同時に、空には隠れていた星たちが現れ、いつしか天の川まではっきり見られるほどに…。

 

初めて見る皆既月食に高鳴る胸の鼓動を感じながら、寝袋に入り込みましたが、興奮でどうも目が冴えてしまいなかなか寝付くことができませんでした。

  10月9日 冷池山荘~鹿島槍ケ岳~五竜岳~五竜山荘

 

皆既月食の翌朝。前夜の余韻が心に残っているのを感じながら、西向きに張ったテントの窓を開くと目の前にはまたまた絶景が。

 

空一面に日の出前の優しい桃色がじんわりと広がり、その淡い光のなかをぼんやりとした大きな月が立山に沈もうとしていました。そして東の方角には、みずみずしい光を放ちながらずんずんと昇ってくる太陽。

朝日と沈みゆく満月を同時に拝むという贅沢で幻想的な光景に圧倒され、思わず涙。ああ、なんて地球は美しいのだろう…。

霜柱をばりばりと踏みながら鹿島槍ケ岳へ。冷たい空気の中、全身に浴びる朝日が気持ちいい。鹿島槍ケ岳頂上からは360度の展望。視界を遮るものは何もなく、ここまで自分がなぞって来た稜線やこれから歩く北の山々が一望できました。

そしてその先にはっきりと日本海が。いよいよゴールが近い!

岩の道を進んで五竜岳へ。八峰キレットなど、痩せた岩尾根を歩きます。

どっしり重厚感ある五竜岳を越え、五竜山荘に到着。強風に手こずりながらもテントを設営してひと休み。

 

ここで最後の地図の入れ替え。

スタートからここまで、計8冊の「山と高原地図」を使ってきましたが、ここでマップケースの地図を「鹿島槍・五竜岳」から最後の「白馬岳」に差し替えました。

 

山、川、空、雲。

美しいものを見続けた旅ももう終盤。ゴールまであと4日でございます。

ゴールが近付きザックもずいぶんと軽くなりました。木曽福島で食糧を買い込んで町を出たときにはなんとか荷物を押し込むという有様だったのに、今やすんなりと収まります。

 

強風にあおられ揺れるテントの中、そんないろいろな小さな変化から旅の終わりを感じるのでした。

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