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南アルプス 縦走 ブログ

南アルプス編①「旅の始まり。ひたすらアスファルト。」

       (9/2~9/5)

  • 9/2 用宗海岸~安倍川沿いに安倍街道を北上~安倍川の土手泊

  • 9/3 桂山~横沢~笠張峠泊

  • 9/4 井川湖~田代~白樺荘横の駐車場泊

  • 9/5 白樺荘でだらだら~畑薙大吊橋のたもと泊

2014年9月2日から10月13日にかけて、「最初から最後まで自分の足で歩く」ということだけをルールに、南アルプス、中央アルプス、北アルプスを縦走し太平洋から日本海まですべて歩くという旅をしました。これはその旅の記録です。

 

そもそも、こうして日本アルプスを縦走しようと思い立ったのは、前年に蓼科山から編笠山まで八ヶ岳を縦走したのがきっかけでした。

4泊5日でゆっくりと八ヶ岳の山々を楽しみ、最後に登った編笠山。その山頂からは南アルプスから北アルプスまで、雄大な山々の姿を一望することができました。

八ヶ岳を縦走し、まとまった区間をひとつなぎで歩くことの楽しさと充足感を感じていた私は、その連なる山を前にして自然と「あのアルプスを全部歩いてみたい」と思うようになっていたのでした......。

 

 

そうして、9月2日午前10時過ぎ、突き抜けるような夏の青空のもと私の旅はスタートしました。

「太平洋から日本海まで全部自分の足で歩く!」

それだけのとてもシンプルな旅です。

 

道中出会った方々から聞くところによると毎年このようなことをする方がおられるようなので、わずかでも、この記録がこれから歩かれる方々の参考になればと思います。とはいえ、私は健脚者でもなく“ただの自然好き”ですので、お手柔らかに。

 

静岡県用宗の海岸で富士山をちらと見ながら海に足を浸し、海水を舐めマザーネイチャーの塩味を堪能してスタート。

ろくに下調べもしていなかった私はいきなり巨大な壁にぶち当たりました。それは80kmの舗装路歩き。山道なら景色も良く風も気持ちいいので何kmでもいいのですが、アスファルトはきつい!今思い返してもこれが一番つらかった。

安倍川沿いの安倍街道をずんずん北へ。登山口となる畑薙ダムを目指します...。

 

しかしながら、歩き続けること数時間。次第に民家が少なくなり山が近づくと、自然と高揚感が湧いてくるもので、「いよいよだ」というワクワク感でザックの重みも忘れて歩いていきました。

...嘘です。重いザックが肩にぐいぐい食い込んで痛いのなんの。数百m歩いては立ち止まってぜえぜえ言っていました。

 

スタートからの道のりはずっと登りでなかなかくたびれるものでしたが、歩くうちにだんだんと雲が近づきいつの間にか目線の高さに見えていたり、お茶の名産地静岡ならではの美しい茶畑の風景が広がっていたり(それなのに私が飲むのは自販機のお~いお茶)、そんな小さな感動が苦しさを一瞬にして吹き飛ばしてくれるのでした。

 

そして何よりも力になるのが、道行く人との会話でした。

「車で送ってやろうか」と声を掛けてくれた人(断腸の思いでお断りしました)や、「お兄さん何歳よ、え、25?いいか、よく聴け、好きなことやってていいのも25くらいまでだ、兄さんギリギリだぞ!ガハハ!がんばれ!」と変な気遣いなしに思うままを言ってくれた郵便配達のおっちゃん。そんなやりとりがカロリーメイト1本分くらいのエネルギーになって足を進めてくれるのでした。

そんな楽しい道を歩くこと約80km、3日目の9月4日18時10分ごろ白樺荘に到着。

ここまで来れば登山口もすぐそこ。しかもここではお風呂に入ることができるのです。

3日目にして初のお風呂です。

 

私にとって2014年9月4日は風呂のためだけにありました。風呂に入りたいというその一心で歩いていたのです。地図上で白樺荘の温泉マークを見つけていたからこそ、ここまでの80kmを歩くことができたのです…。

 

が、しかし!営業時間は18時まで。10分遅れだ。でもまだ灯りはついているしドアも開く。どうしても風呂に入りたい。スタートから3日間汗にまみれて歩き続けた身体を休めたい…!

汗まみれの汚れた格好のままでは、スタッフさんの気を損ねて“入浴拒否”なんてことにもなりかねない。そうなっては一大事、はやる気持ちを抑え新しいTシャツとパンツに着替えてから店内へ。

営業時間外に来てしまったことへの申し訳なさを含んだ絶妙な笑顔をたずさえ、入浴したい旨を伝える。

 

断られる。(無下に)

 

あまりに悔しかったので「明日の朝一番に風呂に入ってやる!」と決意。店のすぐ脇でテントを張り(当てつけではありません)、翌朝開店と同時に入浴。なんて気持ちいいんだろう。露天風呂からの眺めも素晴らしい。お腹一杯ご飯を食べ、昼過ぎまでゆっくり休む。ここで後にお世話になる千枚小屋のお姉さんと出会う。縁とは不思議なものです。13時ごろ店を発ち登山口へ。

 

1時間半ほどで畑薙ダムの大吊橋に着き、手前でテントを設営。

この長い吊橋を渡ればついに南アルプスだ。ダムにまたがる吊橋の真ん中に寝そべり、吹き上げる谷風を感じながら空を見る。冷たい風が心地良い。

ここまでずっと舗装路を歩いてきたが、ついに明日土を踏むことができるのだ。自然の中に入っていくのだ。そう考えただけで思わず頬が緩むのでした。

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